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シンガポール生活あれこれ


by mapleleaf1217
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HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)

シンガポール美術館で今週末まで開催中の
シンガポールの水彩画アーティスト、Ong Kim Seng (1945~)の
展覧会には、「HeartLands」というタイトルがつけられています。
HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_10221986.jpg
「HeartLands」とは、
多くのシンガポーリアンが住んでいる、マーケットや商店に取り囲まれた
HDBの建つシンガポール中流地帯の中心核を指しているのですが、
オン・キム・セン自身、30年以上HDB(公団住宅)にアトリエを構えて
創作活動を続けています。
そんなアーティストにとって身近な、心安らぐ場所が
今回の展覧会のテーマになっているのです。

イギリス人の水彩画家、リチャード・ウォーカーが
1930年代にシンガポールに水彩画の技術を伝えたと言われています。
リチャード・ウォーカーに水彩画の手ほどきを受けた
Lim Cheng Hoe や Chen Wen Hsi などは
シンガポールのパイオニア的なアーティストと言われています。
HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_17221718.jpg

Lim Cheng Hoeの作品。
リム・チェン・ホーは、
生涯、日曜画家でした。

Chen Wen Hsi の絵は身近に見ることが出来ます。
S$50 の後ろ側に描かれた「Gibbons」。
手長猿の絵は、彼の作品であります。
Chen Wen Hsi は実際にこの猿を飼っていたようです。。
HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_10103152.jpg

HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_1725147.jpg

こちらは、
お札の図柄と違いますが、
Chen Wen Hsi の猿シリーズです。

猿の絵の奥に描かれた絵は、
Cheong Soo Pieng の「Dry The Salted Fish」。
cheong Soo Pieng もシンガポール近代アートのパイオニアの一人です。

さて、今現在のシンガポール美術館の外観は
ちょっとHDBチックに装飾(?)されています。
HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_10213632.jpg

HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_1022269.jpg

1本竿に洗濯物を吊るした光景は
シンガポールの風物詩と
いえるかと思います。。
洋服は、オン氏所有物とか。。。
先日雨でびしょびしょに濡れていました。。。。
HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_103022.jpg

彼の作品にも登場します。。

今回の展覧会では、オン・キム・センの初期の作品から
最近の作品まで、35点が展示してありました。
初期の作品は、彼が幼い頃から大人になるまで住んでいた
「Attap」住宅(シュロ葺き屋根の粗末な家)をモデルに描かれた小品が多いです。
およそ3時間ほどで仕上げるのだそうです。
HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_10345125.jpg

HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_10351142.jpg
一方
最近の作品は、近代的な建物をモデルにした大型の作品が多いのですが、
それでも5時間位で仕上げてしまうのだそうです。。。
HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_10364648.jpg
ただの風景画でないところが、彼の作品の面白いところです。
この建物は、オン氏が「Heart lands」と呼んでいる、
現在のMRTレッド・ヒル周辺のもので、
良く見ると、建物の壁に淡いグレーで、昔の様子が描かれているのです!!
その昔、この辺りで大火事があり、沢山の「Attap」住宅が焼け
多くの市民が焼け出されたのだそうです。
そんな災害もあって、シンガポールのHDB建設には、拍車がかかったのだとか。。
淡いグレーで、その火事の記憶が描かれているのだそうです。

オン氏は、展覧会の間、度々美術館を訪れていました。。
チェックのシャツがトレードマーク!?(いつもチェックでした。。)
HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_10463064.jpg

ある土曜日の午後。。。

自ら作品解説をしていました。。

大勢のシンガポーリアンで賑わっていて
オン氏の人気ぶりが伺えました。
ローカルの新聞でも展覧会の様子が大きく取り上げられていました。。。
HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_10514798.jpg
オン氏は、独学で絵の技術を学びました。
家が貧しかったので、お金のかかる美術学校に通えなかったのだそうです。
けれども、なんとしても絵筆で生計を立てたいと頑張って、
現在に至ったのだとか。
初期の頃には、油絵も描いていたようなのですが、
ある時、バスに乗っていたら、隣に座った女性の洋服を
油絵の具で汚してしまって、こっぴどく怒られた経験から、
乾きの良い水彩画しか描かないと決めたのだ、、という
本当か嘘かわからないようなエピソードを披露していました。。。(笑)
HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_10485057.jpg

気軽に写真撮影に
応じてくださいました。

そして、「1枚15㌦はするかな。。。」という冗談を言いながら
名刺をくださいました。。。
HeartLands (Ong Kim Seng の水彩画の世界)_e0121993_110547.jpg

展示会場には、柔らかな光が溢れていたかと思います。
ご苦労なさったのだろうけれども、今現在は、
自分の描きたい物と、人々が求めているものが
上手く噛み合った、幸せなアーティストなのではないかと思います。。
by mapleleaf1217 | 2008-12-04 10:14 | 美術館・博物館