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シンガポール生活あれこれ


by mapleleaf1217
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物乞い、万引き、ペテン師

バス停でバスを待っていると、隣に座っていた老人が
「two dollar・・・」と話しかけてきました。
娘は「おじいさんは、2㌦欲しいっていってる」と言って
自分のがま口(いつも持ち歩いているのです)を取り出して
2㌦札を渡そうとしました。。
シンガポールに来てから、物乞いをしている人を度々見かけます。
そして、彼らに施しをするシンガポーリアンが多くて、ちょっと驚きました。

私は学生の時に、ファーストフードのお店で隣り合った年配の夫婦に
「帰りの電車賃がないから、この切手を買ってくれないか・・」と言われて
とても戸惑った記憶があります。
70円か、80円切手だったし、少ないおこづかいでも充分払える金額だったのですが、
一緒にいたお友達としばらく考えて、結局それを買うことが出来ませんでした。
その時その夫婦に
「買ってくれてもいいじゃないか・・・・何ていう娘たちなんだ」と言われて
ちょっと心に爪あとが残ったのですが、
大人になった今でも、どうすべきだったのか、よく分からないままでいます。。。

今日は、娘が2㌦札を出そうとした時に
「やめなさい」と言ってしまいました。
私はちょっと厳しい表情をしていたようで、娘は驚いた顔をしていました。
その時、ちょうどバスが来たので飛び乗ってしまいました。。。
2㌦札を差し出すべきだったのか否か・・・と、実はまだ考えています。
この記事を読まれた方も、それぞれ意見が分かれるかと思うのですが。。。

そして、思い出した映画がありました。
「物乞い、万引き、ペテン師」は、
エリック・ロメール監督 「レネットとミラベル 四つの冒険」 1986年 フランス 
の中の一つのエピソードの題名です。
随分と物騒な題名ですが、ロメールの作品ですから
何か事件が起こる訳ではなくて、日常のささやかな出来事のひとコマを
切り取っています。
映画の内容については、「レネットとミラベル・・・」で検索すると
沢山でてくるので、ごく簡単に。
田舎育ちで画家志望のレネットと都会に住むインテリのミラベルが、
ヴァカンスで出会って、パリで一緒に住み始めます。
「物乞い、万引き、ペテン師」は二人の体験するエピソードの一つで、
物乞いに施しをするレネット(がま口から小銭をとりだすのです!)に対して、
皆に施しすることなんて出来ないのだからやめるべきだ、と
主張するミラベル。けれども、レネットの意見を聞いて思うところがあったのか
後日、万引きの女性の手助けをしてしまいます。
その話をきいて、怒り出すレネット。
「万引きをすればつかまる、と言うことを教えなくてはいけない」と言って、
そして、自分が体験した事を滔滔と、話し始めます。
「タクシーがメーターを倒さずに、法外な運賃をとろうとしていたのに気がついて、
途中から、メーターを倒すように言って、その金額分だけ支払った。
結局メーターを倒さなかった分については、相手は損をしたのだから、
これからは、そういう事をしなくなるだろう・・」
これに対してミラベルは
「自分だったら、メーターを倒していなかった分まで、きちんと計算して
支払っただろう」と反論します。
二人が議論を戦わせるあたりは、ロメールの得意とする描写かと思います。

さて、今度は、レネットが駅で、小綺麗な身なりの女性に
「バッグを盗まれたので小銭を貸して欲しい・・」と言われて小銭を差し出すのですが、
結局電車に乗り遅れてしまって、電話をかけたくても、小銭がなくて困ってしまいます。
すると、さっきの女性が別の婦人に同じ事をしているのを見かけて、
ペテン師だったと気がつくのです。
レネットは、ペテン師に向かって
「今すぐ小銭を返さなければ、付きまとうから・・」と言い放ちます。
女性は
「本当に小銭がなくて困っている」と泣き出すので、
結局、レネットは返してもらった小銭から、電話代だけとって、
あとは女性に渡してしまうのです。。。

この映画では、
では、結局どうすべきなのか・・という結論は出していません。
白熱した意見交換をしても、結局は個人の思いに依るのだと感じました。
私は映画を観て、
「ペテン師なんだから、嘘泣きだって出来るはず。どうして小銭を渡したんだろう・・」と
思ったりしたのですが、それはあくまでも私の意見です。

ついでに、残りの3つのエピソードを紹介すると、
「青の時間」「カフェのボーイ」「絵の販売」とあって、「物乞い・・」は3番目のエピソード。
「青の時間」は監督の代表作である「緑の光線」を彷彿とさせるエピソードかと思います。
「カフェのボーイ」「絵の販売」は、
それぞれ最後にちょとした落ちがついていて面白かったです。

寝る前にもう一度娘に
「今日、どうしておじいさんに2㌦札をあげようと思ったの?」と聞いてみました。
娘は
「おじいさんが、2㌦欲しいって言っていたから・・」と答えました。

それは、まだ何も知らない純粋な子供の気持ちなのだと思います。
もし、娘がもっと大きくなって、色々な事を経験して、
それでも、こんな風に言えるとしたならば、それはとても凄いことだと思います。。
by mapleleaf1217 | 2008-06-29 23:18 | 映画